思い出書評 アゴタ・クリストフ 悪童日記

先日、雑誌で養老孟司が対談でノーベル文学賞について話していた記事を読んだ
その中でアゴタ・クリストフが今後受賞すべきだということを発言していた

アゴタ・クリストフ、遠い昔を思い出した

10数年前、大学生の頃
同じゼミに背の高い女の人がいた

名前も今は思い出せないくらい、僕はその人と喋ったことがなく
学校ですれ違ったときに会釈をするくらいだった

ある日授業前に教室でぼーっとしていると
不意にその人が僕に話しかけてきて
好きな作家がいて、ぜひその作家の本を読んでみてほしいと言われた

なぜほとんど話をしたことのない僕に、本を薦めてきたのか
理由は分からなかったが、それ程良い本なのかと思い読んでみた

それがアゴタ・クリストフの悪童日記であった
悪童日記

子供の日記のようなものかなと思いながら読み始めた
頁が進むにつれ違和感が段々強くなる
簡素な文章で淡々と綴られる、戦争が引き起こす暴力と性の描写
そんな人間の本質を、賢い子供の目線で語られていた

あっという間に本に引き込まれ、2時間程度で一気に読み明かした
読み終えたあとの、爽快ではない何かモヤッとした哀しさと
見てはいけないものを見てしまったドキドキ
とてもよく覚えている

3部作の1作目で、2作目のふたりの証拠、3作目の第三の嘘も読んだが、
やはり悪童日記の衝撃は忘れられない

これを教えてくれた女の人の名前は忘れたが
この本を教えてくれて、ありがとう